業界勢力図 化学・繊維
化学 〜 海外メーカーとの合弁、高付加価値素材が活路
化学業界売上高ランキング&対前期比
1 三菱ケミカルHD 3兆0,885億円 横ばい
2 住友化学 1兆9,524億円 横ばい
3 三井化学 1兆4,062億円 横ばい
4 信越化学工業 1兆0,254億円 横ばい
5 昭和電工 7,398億円 大幅減
(数字は2012年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)
主要企業の最新動向&トピックス
●1位 三菱ケミカルホールディングス
三菱化学と三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)の共同持株会社として2005年に発足した総合化学メーカー。傘下に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンなどがある。石油化学を主力とし、樹脂加工品、フィルム製品、炭素製品などの機能性商品に強い。2008年以降は太陽電池向けの新素材や医薬品などの成長分野を中心とした事業構造へと転換して不採算事業の統廃合を進め、2010年に繊維大手の旭化成と岡山でエチレン生産統合事業を開始。同地域のエチレンプラント1基の停止を2016年に、三菱化学のエチレンプラント1基の停止を2014年に予定している。一方で、三菱化学は中国の石油化学最大手・中国石油化工(シノペック)との提携関係を強化し、三菱レイヨンは2014年にサウジアラビアの化学大手SABIC(サウジ基礎産業公社)と合弁事業の開始を予定するなど、国際的な連携を増強。米国でシェールガスを使った化学プラントの建設も計画している。
●2位 住友化学
染料・農薬・医薬などのファインケミカル、情報電子分野に注力する総合化学メーカー。傘下に大日本住友製薬がある。2009年、サウジアラビアに合弁会社ペトロ・ラービグを設立し、世界最大級の石油精製・石油化学統合コンビナートの稼動をスタート。2011年には中国に自動車向け高機能材料の製造販売を手掛ける合弁会社を設立し、海外での事業展開を加速している。2012年に日本住友製薬ががん領域を専門とするアメリカのバイオベンチャー企業を買収した。2015 年にエチレンの国内生産停止を予定。
●3位 三井化学
三井系の総合化学メーカー。ポリプロピレン国内首位。自動車、電子・情報材料、生活・環境・エネルギー、包装材料などの幅広い分野に素材を提供している。2008年より太陽電池封止シートの生産能力を増強。2009年には中国石油化工との合弁事業を拡大し、自動車や家電製品向け高機能素材の生産にも乗り出している。2012年、SABICとウレタン事業での提携を結び、2016年の大型プラント立ち上げを計画中。2013年には、石油精製元売り大手の出光興産との合弁会社プライムポリマーと共同で、世界3拠点(米国・メキシコ・中国)での自動車材の生産能力を増強、ブラジルへの新会社設立も予定している。他方ではコスト削減と生産効率向上を図り、2010年に出光興産と千葉でエチレン生産施設の運営統合を開始し、2013年に同地区の高密度ポリエチレン製造装置1基を停止。住友化学などと共同出資したプラント運営会社・京葉エチレンからの離脱も決定している。
●4位 信越化学工業
塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハ世界大手の高機能素材メーカー。シリコン樹脂やレアアース、合成石英などの開発も行っている。塩化ビニル樹脂では、2009年にポルトガルのグループ会社を完全子会社化、2010年には米国に新工場を建設するなど、海外における同事業の増強を推進中。シリコン樹脂では、2012年に中国の新工場を本格稼働して同国での事業拡大を目指している。同年、ベトナムにLEDパッケージ材料の生産拠点とレアアースのリサイクル工場、中国にレアアースマグネットの中間原料であるマグネット用合金の生産拠点を設立。レアアースマグネットはハイブリッド車のモーターに必要な素材で、今後は電気自動車や風力発電など、省エネ関連での需要の伸びが見込まれている。
●5位 昭和電工
石油化学、カーボン、セラミックス、アルミニウム各種製品、ハードディスクメディア、エレクトロニクス材料などを手掛ける総合化学メーカー。日本やシンガポールを主な生産拠点とし、大分にエチレンプラントを所有している。最新技術の開発で機能の向上を成し遂げたハードディスクメディアでは、外販メーカーとして世界トップクラスのシェアを誇る。高付加価値素材の開発・事業化に力を入れており、2013年には三菱商事と炭素素材の事業化に向けた提携を開始した。一方で、不採算事業からの撤退や大幅なコスト削減、基盤事業の収益性強化を推進。稼働率が低迷している大分コンビナートでタイヤなどに使う合成ゴム原料の生産を2016年に開始し、収益の改善を目指すとしている。
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