知っていれば安心! 内定辞退への正しい対応
内定辞退の法律的な扱いは?
前ページにおいて「内定は契約である」ということを述べた。ここでは、法律的に内定辞退がどう取り扱われているかを見ていこう。
内定は「雇用契約である」ということなのだが、内々定(10月1日以前)あるいは内定(10月1日以降)を辞退するという行為の法律的な効力や拘束力は、実はない。
「効力がない」という裏付けには、憲法22条の「職業選択の自由」の存在がある。では、「内定承諾書(誓約書)の存在はいったい何なのか?」という声も聞こえてきそうだが、内定承諾書は採用において企業と学生とが交わす「約束」の意思表示であり、お互いの信頼関係の証しなのだ。
内定辞退で企業側が違約金を請求したり、何らかの罰則を設けることは労働基準法第16条で禁じられている。内定者が入社を承諾しながら後に辞退した場合は、法律的には「労働契約の解約」という扱いになり、 民放の第627条で「労働契約解約の意志表示をした日から2週間たてば解約は成立する」と明記されているのだ。
これだけを見ると、前ページに記したA、B、Cの3パターンのどれもが法律的に問題がなく、就活生には何の影響もないように見えるが、企業との信頼関係を損なうわけなので、倫理的な部分での問題が残る。それが思わぬ影響を及ぼす場合もあるのだ。
内定辞退が思わぬ事態に……2つの事例
内定辞退が法律的に問題なく、罰されることがなく、過度に内定辞退にナーバスにならなくていいことは理解できたが、後に遺恨が残るケースがある。特に以下に挙げる2つのケースが典型的。あなたの行いが学校や後輩にも影響を与えてしまうこともあるので、よく覚えておき、こういう事態を招かないようにしよう。
自分が辞退したために、翌年母校からの採用がゼロに!
学校推薦や学校の紹介で採用にエントリーした場合、個人の就活生の内定辞退が企業と学校の信頼関係をも傷つけてしまうことがある。企業が学校推薦を受け入れたり、直接学校に求人票を送ったりして採用を行うということは、その企業と学校との信頼関係が強い表れだ。人事部はその学校から採用した社員がどのようなパフォーマンスをあげ、企業に貢献をしているかを理解した上で、学校から直接、学生を推薦してもらったり、紹介してもらったりしている。学校側からしても、その企業がいわゆるブラックな企業ではないという前提で、同校の学生を積極的に採用してくれることは、就職率が偏差値に影響する昨今、ありがたいことなのだ。
学校推薦や学校紹介を受けた学生がこういった良好な関係を無視して、内定辞退をするということは、その信頼関係を壊すことにもつながる。極端な場合、翌年からその学校からの採用はゼロになってしまうことも……。
就活の際に学校の推薦や学校の紹介を慎重に扱うことはもちろんだが、どうしても辞退したい場合は、その旨を必ず事前に学校の就職課やキャリアセンターに伝え、相談をしよう。また、学校推薦や学校の紹介ではない場合でも、行為によっては学校の評価を下げ、翌年からの採用に影響を与える可能性も否定できないので、注意しよう。
内定辞退の時期が入社ギリギリで損害賠償に!
内定辞退に罰則を設けることは、労働基準法第16条で法律的に禁止されていると記した。労働契約については、その通りなのだが、内定辞退によって企業に実際に生じた損害については、損害賠償を請求することは可能だ。例えば、その学生の入社に備え、さまざまな備品を購入したり、研修などの契約を締結しており、その費用がムダになった……などのケースだ。いくら2週間あれば雇用契約は解約可能といっても、入社2週間前に辞退したりすると、こういった最悪の事態を招きかねない。
そういうことを引き起こさないためには、ギリギリまで複数の内定を保持することをせず、迅速に保持している内定の優先度を決めて、速やかに内定を辞退する必要がある。
実際に「内定辞退が悪質」と判断され、損害賠償訴訟を起こされたケースもあるので、内定辞退は速やかに判断し、連絡したい。中には悪質な企業もあり、不当な賠償を求めてくるケースもあるようなので、そういう場合は就職課やキャリアセンターに相談し、それでも解決しない場合は警察などに訴えることも考えよう。だが、いちばん重要なのは、そういう事態を招かないように速やかに内定を辞退することだ。