業界勢力図 化学・繊維
繊維 〜 多角化、海外展開、高機能繊維がカギ
繊維業界売上高ランキング&対前期比
1 旭化成 1兆 6,666億円 やや増加
2 東レ 1兆 5,922億円 横ばい
3 帝人 7,457億円 大幅減
4 ダイワボウHD 5,134億円 横ばい
5 三菱レイヨン 4.569億円 横ばい
(数字は2012年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)
主要企業の最新動向&トピックス
●1位 旭化成
繊維、化成品(化学工業製品)、住宅、医薬品、電子材料など多角的に事業を展開。主力事業ごとに事業会社を設け、幅広い分野に高機能素材を提供している。主なブランドは家庭用食品包装材「サランラップ」、住宅「ヘーベルハウス」、再生セルロース繊維「ベンベルグ」など。水処理膜、リチウムイオン2次電池材料、携帯機器用の電子部品は世界市場で広いシェアを獲得しており、中国やタイなどアジア各国へ供給している紙おむつ向けの高機能不織布も好調。2012年には米医療機器メーカーのゾール・メディカルを買収し、医療事業を強化している。近年、主力事業としてきたポリウレタン繊維「ロイカ」は、世界的な価格下落や原料価格の高止まりにより、2012年に米国での製造・販売を停止。2016年には三菱ケミカルホールディングスと共同運営するエチレンプラント1基の停止を予定している。
●2位 東レ
三井グループの中核企業で、炭素繊維生産高世界トップ。航空機、自動車、一般産業用の補強材、スポーツなどさまざまな分野に軽量で強度のある炭素繊維「トレカ」ブランドの製品を提供している。近年は買収や提携による炭素繊維事業の増強を図っており、2013年には韓国の水処理膜大手ウンジンケミカル、炭素繊維世界3位の米ゾルテックを買収している。水処理事業にも強く、高い技術力を活かした海水淡水化システムや下水再利用システムは国内外で導入が進んでいる。このほか、2013年には自動車エアバッグ用繊維の需要拡大を受け、タイの生産設備の増強を決定。2010年に提携関係を強化したユニクロとは、共同開発した大ヒット商品「ヒートテック(発熱機能と保温機能を併せ持つ高機能素材)」を超える素材開発を推進している。
●3位 帝人
独立系の合成繊維大手。アラミド繊維では世界1位、炭素繊維では世界2位の生産高を誇り、産業繊維、透明樹脂、化成品、医薬品などの分野で高機能製品を展開。2010年に参加の炭素繊維メーカー・東邦テナックスがヨーロッパの大手航空宇宙防衛企業やカナダの旅客機メーカーと長期契約を締結し、航空機向けに炭素繊維の供給を開始。2013年にはアジア・オセアニア地域の炭素繊維市場を開拓するため、シンガポールに現地法人を設けている。アラミド繊維では、2012年に傘下の帝人テクノプロダクツの製品がアメリカの火星探査機の着陸用パラシュートに採用された。このほか、近年は中国での水処理事業も推進中。
●4位 ダイワボウホールディングス
持株会社化にともない、2009年に「大和紡績」から現在の社名に変更。天然繊維製品の製造・販売、電気部品組立、情報機器販売、工作機械などの製造・販売、レジャー・不動産業など多角的に事業を展開している。2009年にダイワボウ情報システムを子会社化し、IT関連分野に進出した。繊維分野では、衣料用だけでなく産業用の高機能繊維も強化しており、2014年にインドネシアで紙おむつ向けの高機能不織布の生産開始を予定している。
●5位 三菱レイヨン
三菱ケミカルホールディングスの子会社で、世界で唯一の総合アクリル繊維メーカー。メタクリル酸メチル樹脂生産高世界首位、炭素繊維生産高世界3位。原料から中間材料、加工品に至る一貫した生産体制を確立し、炭素繊維「パイロフィル」を幅広い分野で展開している。2010年にドイツの炭素製品メーカーと合弁で自動車向けの炭素繊維材料の供給を開始し、2012年には韓国の化学メーカーと炭素繊維分野で事業提携を締結。2013年には米国のグループ会社2社を統合し、米国での炭素繊維・複合材料事業の拡大を加速している。近年は水処理事業も強化しており、中国やベトナムなどでの海外展開や、アジアの有力大学との水処理膜の共同開発を進めている。
このほか、高機能樹脂に強いクラレ、環境・エネルギー分野を強化中の日清紡ホールディングス、フィルム、機能性樹脂など衣料繊維以外の売上高が7割超の東洋紡などがある。
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