業界研究 化学・繊維
あらゆる製品に欠かせない「素材」を生み出す
業界トピックス
●成長分野として期待される高付加価値の環境関連素材
化学・繊維業界では、クリーンエネルギーとして注目される太陽電池事業が好調。世界の太陽電池市場は、2030年には2010年の約4倍となる13兆3,140億円まで拡大すると予想されており、大手各社は太陽電池に欠かせないシリコンウエハー素材の開発・投入に注力している。蓄電容量が大きく、充電することで繰り返し使用でき、環境に優しいリチウムイオン2次電池も電機自動車向けの需要が拡大しており、乗用車だけでなく、トラックやバスのような大型車でも使用できる大容量・大出力の電池の開発が行われている。また、海水の淡水化や下廃水のリサイクルを行う排水処理事業も今後ますます成長が期待される分野で、化学・繊維メーカーは水不足に悩む中国などアジア諸国への販売を強化している。
●世界トップレベルの技術水準を有する高機能繊維
繊維業界では、繊維の原料や繊維自体を加工することで、従来にない機能を持たせた高機能繊維が新たな収益柱に成長している。その代表格の炭素繊維は、軽量でありながら耐熱性や強度に優れる素材。スポーツ器具や強化プラスチックの補強材、自動車、航空機、宇宙機器など幅広い産業分野で需要が拡大しており、東レ、帝人、三菱レイヨンの3社が世界シェアの7割を占めている。また、東レがユニクロと共同開発して大ヒットした「ヒートテック(発熱機能と保温機能を併せ持つ高機能素材)」のように、衣料用繊維の分野でも高機能化が進んでいる。今後は、こういった高機能繊維の開発競争が一層激しくなると見られる。
業界キーワード
●エチレン
プラスチックや合成ゴム、合成繊維などの石油化学製品の基礎となる原料。日本ではナフサを分解・精製して作られる。エチレンの生産能力は石油化学産業の規模を示す指標とされている。
●エアバッグ用繊維
自動車のエアバッグに用いられる強度、耐熱性、耐久性に優れたナイロン繊維。自動車生産台数の増加と、新興国市場におけるエアバッグ装着率の向上により、世界的な需要の拡大が見込まれている。日本勢では東レや東洋紡績などが事業を拡大している。