業界研究 化学・繊維
あらゆる製品に欠かせない「素材」を生み出す
業界の動向
●化学業界
化学業界は2008年以降、世界的な景気低迷による需要の減少に苦しめられてきた。2010年度は中国などアジア諸国向けや、自動車・半導体向けの石油化学製品が好調で、大手化学メーカーの業績は大幅に拡大したものの、2011年に入ると状況は一変。東日本大震災によるプラント被災やサプライチェーン(供給網)の寸断、欧州危機、タイの洪水に伴う顧客の現地工場の操業停止といった悪材料が重なり、化学メーカーの生産実績は大きく落ち込んだ。2012年には震災や洪水の悪影響からは脱したが、引き続き苦戦を強いられている。
特に厳しい環境に置かれているのは、国内の需要減をアジア諸国への輸出で補ってきた石油化学メーカーだ。近年、天然ガス由来の安価なエチレンに強みを持つ中東や、最大の需要国である中国で、大規模なプラントが次々と始動。低コストの石油化学製品がアジア市場に流入した。コストの高いナフサを主な原料とする日本勢は海外勢との価格競争に打ち勝てず、エチレンの生産実績は激減。プラントの稼働率が下がり、設備が余るという事態に陥っている。さらに、米国で安価なシェールガスを使ったプラントの新設計画が相次いでおり、今後、日本勢はさらなる劣勢に立たされる可能性もある。
こうした状況を受け、大手石油化学メーカーはエチレンプラントの統廃合や再編で事業の効率化を図る一方、中国や中東の化学メーカーとの合弁事業を進めている。また、環境・エネルギー、医療機器、医薬品などの成長分野に向けた高付加価値素材の開発や、電子部品材料などの非石油化学分野へと進出する動きも活発化している。
●繊維業界
繊維業界では、国内アパレルメーカーの生産拠点の海外移転、安価な海外製品の輸入増、人口減少による衣料品の伸び悩みなどを背景に、国内市場の縮小が続いている。一方で、海外市場は中国など新興国を中心に成長が見込まれており、天然繊維は低調なものの、化学繊維の需要は拡大傾向にある。
こうした中、大手繊維メーカー各社は非繊維分野に力を入れ、収益の安定を図っている。また、高機能繊維を新たな事業の柱とし、海外展開に注力する企業も多い。
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